FC2カウンター なすかの世界 虹を架ける者------第1話
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虹を架ける者------第1話

 ヒタ、ヒタ、ヒタ――――。
 深い、深い闇の中から、何者かかが忍び寄る音がする――――。
 いくら目を凝らしても、闇が深すぎて何も見えない。しかし音は、確実に近づいている。
『・・・・・・だれ?』
 思い切って誰何してみる。それでも音は止まることなく近づいてくる。
 そしてそれは突然現れた!
 闇よりもさらに濃い、濃すぎる影を纏った者・・・・・・その影からおもむろに手が伸び、首をつかまれた。
『く、くるしい・・・・・・!』
 息が詰まる、意識が遠のいていく――――。
「――――ま!―――さま!」
 声が聞こえる・・・・・・誰かを呼ぶ声・・・・・・誰が、誰を・・・・・・?
「ルーティさま!」
 その瞬間、ルーティは悪夢から解放された。顔を覗き込んでいるのは、同じ年頃の少女。
「ルーティさま、大丈夫ですか?気をしっかり!」
「・・・・・・アーリィ?」
 ルーティは思い出した。目の前の者が誰か、今現在、自分が置かれている立場。
「そう・・・・・・だったわね、今、旅の途中なのだったわ」
 ここは、虫の国と呼ばれているアイセント王国と、虹の国と呼ばれているイリス王国との国境付近にある街の、小さな宿の一室だ。
「今、悪夢退散に効く香草茶をお入れします」
「あぁ、いいのよアーリィ、たぶんもう夜明けが近いわ、このまま起きてしまいましょう」
 部屋の窓には夜盗除けと、夜逃げ防止のために鎧戸がしっかり閉められているが、ルーティには陽が昇りつつあるのが感じられた。
「そうですか?それでは目覚め用の紅茶をお入れしますね」
 これには素直に礼を言うルーティ。そして寝台から出ようとしたときに、何か柔らかい物を踏みつけた。
「キキー!」
 ソレは、甲高い悲鳴を上げた。
「まぁ、ごめんなさい」
 ルーティはあわてて足をのけると、床でのびているそれをそっと抱き上げた。それは、純白の毛を持った、小さな小さな猿だった。
「ほんとうにごめんなさいね、キャッパー」
「キキィ・・・・・・」
 キャッパーは恨めしそうにルーティを見上げるが、甘えるように彼女の頬に擦り寄った。
「気にすることはありませんよ、ルーティさま、そんなところで寝ていたのが悪いんですから」
 手際よく紅茶を用意したアーリィが、テーブルと椅子を整えながら言った。
「そんなことないわ、不注意だった私が悪いのよ」
 ルーティはキャッパーを抱いたまま、アーリィが整えてくれた椅子に腰をかける。そして、上品に紅茶の入ったカップを持ち上げ、一口ずつ、ゆっくりと喉に流していった。
「おいしいわ、いつもありがとう、アーリィ」
「いえ、申し訳ございません、そんな物しか用意できず・・・・・・」
 本来なら、もっと上等な茶葉を用いるべきところ、今日、用意できたのは、宿の主人から譲ってもらった安い茶葉だ。
「旅の途中なのだもの、仕方ないわ。それに、わたし、贅沢は望まないわよ」
 にっこり微笑むルーティ。その笑顔を見ていると、アーリィはますます居たたまれなくなる。
 アーリィの考えていることがわかり、ルーティはひとつ苦笑する。そして、その瞳に決意をたたえる。
「はやく、旅の目的を果たしましょう」
「はい!」
 アーリィも居住まいを正し、しっかりと頷く。
「ウキャ!」
 それを真似するように、小猿のキャッパーも小さな頭を縦に振った。その様子があまりに愛らしく、ルーティは破顔した。


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ルーティはわかったけど…キャッパーって、もしかして・・・wいや~w楽しみだw
かっぱ | URL | 2006/11/06/Mon 00:45 [EDIT]
>かっぱさん
え~?ルーティわかったぁ?
ちょっと残念だなぁw
なすか | URL | 2006/11/06/Mon 15:54 [EDIT]

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