FC2カウンター なすかの世界 LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族
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LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族

      0-4 爆

 大陸一つを支配するラ・カンティ帝国。その西域最大の街、シーアルスに四人の旅人が到着したのは、外門が閉じる直前のことだった。
 彼らは、宿をとって休むことなく、足早にある建物に入っていった。
 質素な造りのそれは、大きな街には必ず存在する、魔術院と呼ばれるものであり、そこでは、魔術を学びたい者にそれを教え、また、不可思議な現象、物などを調べてくれる場でもある。
 四人の旅人の目的は、後者の調べ物――――そう、額に、得体の知れない石が張り付いている、ユーラを調べてもらうことだ。
 すでに、帰り支度を始めていた調査員に、強引に頼み込み、調べてもらった結果は――――。
「これは、何やら異質なものにとり憑かれてますねぇ」
 薄く、丸く削りだされた水晶を両目に当てながら、調査員の男はおっとりとそう言った。
「・・・・・・憑かれてる?」
 きょとんと、オウム返しにするナーヴァ。
「それは・・・つまるところ・・・幽霊・・・ってことかい?」
 眉間にぎゅっと皺を寄せるシャイア。
「いえ、幽霊ではありません。マイナスの気を発してませんから」
 丸水晶――――眼鏡をクイクイと動かしながら、やはりのんびりと答える調査員。
「・・・・・・では、その正体は何です?」
 静かな声音で尋ねるベイルの質問にも、
「わかりませんねぇ。未知のものとしか言いようがありません」
 と、あっさりと応じてきた。そして、
「これ以上のことは、ここでは調べかねますので、帝都の魔術院へ行かれてはいかがですか?」
 と、それだけ言うと、今度こそ帰り支度をして部屋を出ていってしまった。
 あとに残されたユーラ以外の三人は、閉じられた扉を睨むように見つめるばかり。
「あの・・・・・・帝都・・・・・・行くの?」
 遠慮がちに声を上げたのは、得体の知れない未知の存在にとり憑かれていると言われた張本人。
「えぇまぁ・・・・・・それについては、今日はもう遅いですし、明日話し合いましょう」
「そうだね、宿をとって、飯食って寝ちまおう」
 さも疲れた、と言わんばかりに、首を回すシャイア。
 魔術院を出た四人は、近くにあった中級の宿に入り、部屋を二つとって夕食を済ませ、各々寝台に潜っていった。
 なんといっても久しぶりの寝台である。特にこの三、四日ほどは強行軍だったために、三人はすとんと眠りに落ちていった。
 ただ一人、なかなか寝付けずにいたのはユーラ。”とり憑かれている”ということに、少なからず動揺を覚えていた。
(いったい、何なんだろう?わたし、どうなるのかな・・・・・・?)
 気にはなったが、それでもやはり彼女も疲れていたため、次第にまどろみ始めた。
 夢か現か、どちらともいえないその時に、彼女の名を呼ぶ声に気づいた。その声に意識を向けると、脳裏にぼんやりと赤い人影が浮かび上がった。
(誰・・・・・・?)
(我が名はフィール・フレイン、炎の守護顕獣と呼ばれる者なり)
(フィール・・・?守護顕獣・・・?)
 次第にはっきり見えてきた、炎を纏った男性の姿を目にするなり、ユーラは三日前のことを突然、思い出した。
(あなたはあの時の・・・・・・!)


「――――ラ!ユーラ!いつまで寝てるんだい!」
 シャイアの怒鳴り声と同時に、掛け布を剥ぎ取られたユーラは、寝台の上に飛び起きた。
 焦点の合わない目で辺りを見回すと、窓が目に入った。窓からさんさんと暑い日差しが振り込んでいる。もう、陽が高くなっているのだ。
「ちゃんと起きてるのかい?ユーラ?」
 未だぼんやりしているユーラを、少し心配そうな顔をして、シャイアが覗き込む。
「あ、うん・・・・・・おはよー」
「起きたね?それじゃさっさと着替えて下りてきな。朝飯食べながら、今後の相談だよ」
 まだはれぼったい目を手の甲で拭っているユーラに、着替えを投げ渡して、シャイアは部屋を出て行った。階段を下りる、軽快な足音が続く。
「・・・・・・・・・夢・・・だったのかなぁ?」
 炎の姿をした男性を思い浮かべながら、首をかしげる。夢にしては生々しく、また、現実にしては荒唐無稽だった。
「一応、みんなに話しておいた方がいいかな・・・?」
 着替え終わったユーラは、もそもそと寝台から下り、部屋を出た。階段を下りていくと、宿泊客や街の住人たちが朝食をとっている、賑やかな声や音が聞こえてきた。
「ユーラ!おはよう!こっちだよ!」
 ナーヴァの声に振り向いたユーラは、1階の、奥まったところにあるテーブルを陣取っている三人を見つけて、そちらに歩を進める。
「よく眠れましたか?」
 ベイルが椅子を勧めてくれながら、そう優しく微笑んだ。
「うん」
 ユーラも、椅子に座りながらにっこりと返す。
「さて、さっそくですが、昨日の調査結果のことについて――――」
 ベイルがそう切り出すと、すかさずナーヴァが手を上げる。
「やっぱ帝都に行くだろ?正体不明なんて気持ち悪いジャン?」
「あたしも同感だね」
 うんうんと頷くシャイア。
「そうですね、私もそう思います」
 ベイルも静かに頷く。しかし――――、
「あ・・・ちょっと待って」
 遠慮がちに異議を唱えるのは、とり憑かれてる張本人。三人の視線が一斉に集まる。
「あのね、夢・・・というか、夢じゃないとは思うんだけど・・・・・・」
「何が言いたいんだい!はっきりお言い!」
 しどろもどろと言いよどむユーラに、いらいらとしたシャイアが克を入れる。
「だ、だからね!帝都には行くなってフィールが!」
 びびっと背筋を伸ばして、ユーラは一気に告げた。
「・・・・・・フィール?」
「誰だそれ?」
「あ、そっか・・・えと・・・だからね」
 そうして、ユーラは昨夜、夢枕に立った炎の男性について語って聞かせた。
 フィール・フレインと名乗った男性は、ユーラに、帝都に行ってはいけない、ということと、”守護の一族”を探して欲しい、と言ってきたのだった。
「守護の一族?なんだよそれ?」
 訳が分からないと、ナーヴァは頬をふくらませる。
「フィールが言うには、四種の守護顕獣と供に、世界の秩序を保つために努めてる人たちなんだって」
「だいたい、その守護顕獣ってなんだい?」
 またまた、眉間に皺を寄せるシャイア。
「わたしもよく分からないけど、四種の力をそれぞれ司ってる存在なんだって」
「それで、なぜ、帝都に行ってはいけないと?」
 顎に長い指を当てながら、思案顔でベイルが問う。
「危険なんだって・・・・・・。フィールたち守護顕獣や守護の一族って人たち、皇帝に追われてるんだって」
「「なんだそりゃ!?」」
 シャイアとナーヴァの声が、きれいに揃った。
「皇帝・・・・・・ですか・・・・・・なるほど」
 ただ一人、ベイルだけが訳知り顔で頷く。
「なんだよ!?どういうことだよ、ベイル!」
 自分に知らないことがあるのが許せない年頃のナーヴァが、鼻息も荒く、ベイルを問いただす。
「聖賢王アルファーン皇帝陛下は、現在、混沌狩りの真っ最中だそうですよ」
「「「混沌狩り?」」」
 今度は、三人の声が重なった。
「皇帝陛下が混沌と判断されたものは全て、討伐されていると聞きます。つまり、ユーラの言う、守護顕獣や守護の一族とやらは、陛下に混沌と見なされた
のでしょう」
「・・・・・・だから、その守護顕獣とやらに憑かれてるユーラが帝都に近づくのは危険だと、そういうことなのかい?」
 剣呑な光を瞳に宿らせて、シャイアが低く唸る。
「そういうことなのでしょう」
「ふざけるな!!!」
 バン!とテーブルを割らんばかりに拳を打ちつけ、シャイアはユーラを――否、ユーラの額の赤い石を鬼のような形相で睨み、どなりつけた。
「だったらユーラから出ていきな!!」
 そんなものに憑かれていては、帝都に近づこうが近づかなかろうが、遅かれ早かれ、危険なことに変わりはない。シャイアにとって、ユーラは可愛い妹分――信じられないかもしれないが――なのだ、危険な存在には即刻立ち去ってもらわねばならない。
「あ、あの・・・・・・シャイア、落ち着いて・・・・・・」
「落ち着いてられるかい!!」
 今度はユーラ自身を睨みつけるシャイア。いつもなら、ここで怖気づくユーラだが、
「聞いて!シャイア!」
 と、彼女にしては珍しく、まなじりをきつくしてシャイアを真正面から見据える。意外な強さに、シャイアは押し黙った。
「フィールは・・・・・・守護顕獣が司ってる力は、この世界の安定に欠かせないものなんだって。だけど、単体でいては暴走するばかりで、誰かに憑いていないと力を発揮できないんだって。ほんとは、守護の一族の巫女さんに宿るものらしいんだけど、皇帝に――――」
 一気にまくしたてたユーラは、そこで言いよどむ。あとを引き取ったのはベイルだ。
「皇帝陛下に討伐されてしまった・・・というわけですね」
「そう・・・・・・なんだって・・・」
 四人の間にしばし沈黙が流れる。それを最初に破ったのは、素朴な疑問を抱いたナーヴァだった。
「暴走って・・・・・・どうなるんだ?」
 魔術師だけいに、力の暴走には常に気をつけている彼ならではの疑問だったかもしれない。
「えっとね・・・・・・フィールの場合は炎を司ってるから・・・・・・火山の爆発、とか?」
 とか?などと、可愛らしく首をかしげてもらいたくはない、内容だ。
「要するに、守護の一族を探さないことには、ユーラから離れない、というわけですね?」
 質問と言うよりは、確認を取るかのようなベイルの発言に、ユーラは小さく頷いた。
「まぁ、正体もなんとなく解ったことですし、帝都に行く必要はなくなったわけですが・・・・・・」
「え?解ったの?」
 ぎょっとするナーヴァ。それに対して、
「解ったでしょう?守護顕獣という、世界の安定に欠かせない存在だということが」
 いともあっさり答えるベイル。ナーヴァは、なんともいえない情けない顔をして、頭を抱えた。
「よくわかんねぇよぉ・・・・・・」
「帝都に行かないってのは、まぁいいさ。で?その守護の一族とやらは、どこにいるんだい?どうやって探すんだい?」
 不機嫌さを隠しもしないシャイアに睨まれても、ベイルは涼しい顔でこう答える。
「それについては、私の師匠に聞いたことがあります。守護の一族の里は秘められていますが、四方の拠点に、連絡役を務める者がいるそうです」
 これに対して、返ってきた反応は様々だった。
「一族のこと知ってたのかよ?ベイル!?」
「師匠って・・・・・・あの妖怪ジジィかい?」
「どこにあるの!?」
 ベイルはあくまで冷静沈着さを崩さず、ひとつひとつ答えていった。
「守護の一族について、ほんの少しだけ聞いていただけですよ」
「妖怪とは失礼ですね、単に老齢なだけですよ、だからこそ知識が豊富なんです」
「私が聞いた拠点は、北の方にある小さな町だけですよ」
 それを聞いたユーラの顔が、ぱぁっと明るくなった。
「そこ行きたい!お願い、教えてベイル!」
 何やら使命感に燃えているらしい少女に苦笑しつつ、ベイルは深く頷いた。
「また少し長旅になりますからね。今日一日準備をして、明日出発しましょう」
 ナーヴァとシャイアの苦虫を噛み潰したような表情とは対照的に、歓声を上げて喜ぶユーラ。
 ちょうどその時、何の偶然か、宿の厨房ではかまどの火が大きく跳ね上がっていた。


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