FC2カウンター なすかの世界 LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族
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LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族
     0-3 焔

 草色の布の下で姿消しの術を施しながら、一向は平原を西へと進んだ。
 長身のベイルの膝の高さに生い茂る草を、先頭を行くシャイアは慎重に踏み分けていった。
 なるべく音を立てないように息をひそめながらの行軍は、術を行っているナーヴァだけでなく、他の三人の精神も疲労させた。
 すでに二回の休憩を終えて、魔物に気づかれることなく半分を超えていた。
そして、一向はそろそろ三度目の休憩地点までやってきていた。
「‥‥この辺りで最後の休憩にしましょう」
「‥‥おう‥‥」
 ナーヴァは深いため息とともに術を維持させるための集中を解いた。そうとう疲れているようで、肩で息をしている。
「大丈夫?ナーヴァ‥‥」
 従兄弟がこんなに頑張っているのに、何も出来ない自分が情けない。ユーラは唇をかみしめる。いつもなら気にするなと明るく笑うナーヴァも、疲れきっていて顔を上げる余裕もない。
「しかし‥‥はたから見てると情けないだろうね‥‥」
 魔物を恐れて必死になって布切れ一枚にすがっている今の様は―――。シャイアは腕に自信の有る剣士だけに、面白くない気分だった。
「仕方有りません、無用な戦闘を避けるためです」
 シャイアの気持ちを察して、ベイルが苦く笑ったその時―――。
「ギャアアアァァ!!」
「!」
 非常に近くで魔物の鳴き声が辺りに轟いた。四人ははっと身構え、注意深く布の下から周りの様子をうかがった。すると、すぐ目の前を、大きな影が太陽光をさえぎって飛び過ぎていった。
「‥‥み、見つかったか!?」
 まだ息の切れているナーヴァが、座り込んでいた腰を少し上げる。
「‥‥‥いえ、まだのようですが‥‥‥」
「‥‥‥時間の問題だね」
 チャキッとシャイアの腰元で音が鳴る。彼女が剣を抜きにかかっているのだ。
「くそぅ‥‥‥勘の良いヤツだな‥‥」
「ど、どうするの?」
 ユーラは最悪の事態に狼狽し、一行の頭脳であるベイルにすがる瞳を向ける。それを真っ向から受け止めた彼は一度大きく頷き、
「こうなったらやるしかありません、シャイア、ナーヴァ!」
「ああ、やってやろうじゃない!」
「もう少し、休ませてほしかったけどな」
 シャイアはいまや完全に剣を抜き放ち、ナーヴァも深呼吸を繰り返して息を整える。
「わ、わたしは何をすればいい?」
 何も出来ないことは分かっているが、それでも何かやろうと問い掛けるユーラに、ベイルは布の端をしっかりと握らせた。
「君はこの布をしっかりと被って、あの森まで走りなさい」
「‥‥‥え?」
「いいですね」
 ベイルはそう念をおしてシャイアたちとともに外へ飛び出そうとする。慌てたユーラは必死で言葉をまくし立てる。
「そんな!みんなを置いて一人で逃げるなんて出来ないよ!」
「それじゃあ言ってやろうかい?足手まといだって!」
 眼光鋭くシャイアはユーラを睨み付ける。反論も何もかもすべて許さないとその瞳は語っていた。
 ユーラは、自身の力のなさに、泣きそうになるのをぐっと堪えて、小さく頷いた。言われるまでもなく、足手まといなのは解っていた。
「それでは行きなさい!」
 ベイルがユーラの背中を押した。飛び過ぎていた魔物が、悠然と旋回し、こちらに戻ってこようとしている。
 覚悟を決めて、布をしっかり握り締めたユーラは、森に向けて駆け出した。それと同時に、シャイアが魔物に向かって飛び出し、注意を引くため気合の声を上げた。
「おらー!こっちだ!デカブツ!」
「・・・・・・もはや女捨ててるねぇ」
 場違いな呟きをもらし、術のための集中に入るナーヴァ。
 ベイルは、携帯鞄からいくつかの薬草を取り出し、小皿に載せると、
「ナーヴァ、これを燃やしてください。魔物が嫌う匂いが出ます」
 と言いながら、空いてる手は別の薬草をまさぐっていた。
 みんな、闘うために一瞬たりとも無駄にしようとしない。何もできることがないならせめて、みんなの邪魔にならないよう、一生懸命走って逃げよう。
 ユーラのそんな決心はしかし、シャイアたちを無視した魔物によって砕かれることになる。
 魔物は、シャイアたちには目もくれず、ユーラの握る布を目指し、掠めて飛び抜けていった。魔物の起こした風に煽られ、ユーラは転倒した。そのはずみで布を手放してしまい、風にさらわれ、飛んでいってしまった。
 再び旋回した魔物は、あらわになったユーラ目指して、今度は鋭く光る鉤爪を向けながら飛来する!
「ユーラ!」
 シャイアとベイルが駆け寄ってくる!
 ナーヴァが目くらましの術に集中する!
 しかし、間に合わない!
 恐怖のあまり、声も出せずにただただ大きな鉤爪を見つめるユーラ。
(わたし・・・・やられる・・・・?)
 そう、半ば以上覚悟したとき、それは起こった。
 今まさに、捕らわれそうになったユーラの額から、赤い閃光がほとばしった!光は魔物を包み込むと、その身を一気に燃え上がらせた。
「ギョアアアアアアァァ!!!」
 突然のことに、鉤爪を引っ込め、ユーラを飛び越しながら、草原に落ちていく魔物。
「ギャオアァァァ!!」
 猛威を奮う炎に舐められ、魔物は苦しげに地をのた打ち回る。その様を、信じられない面持ちで見つめていたベイルは、あることに気がついた。
「炎が・・・・草原に燃え移っていない・・・・?」
 そのとおり、燃えているのは魔物だけで、その周囲の草花は焦げる事すらない。
「そ、そうだ、ユーラ!」
 ベイルの声に、硬直の呪縛から解放されたシャイアが、ユーラに駆け寄る。ユーラは、恐怖のためなのか、意識を失い、横たわっていたが、怪我をしている様子はない。
「ベイル!いったい何が起きたんだ!?」
 術に集中するため、目を閉じていたナーヴァには、赤い閃光が見えなかった。たとえ、見えていたとしても、何が起こったのかは、理解できなかったろう。ベイルとて、聞かれても答えられない。
「それよりも、今のうちに森の中へ!この騒ぎでは、新手が来るかもしれません!」
 ベイルの指示に頷き、シャイアはユーラを抱え上げると、森に向かって走り出した。ナーヴァもそれに続く。
 ベイルは最後に、ちらりと魔物を一瞥し、森へと駆け出した。
 魔物はもはや、声を上げることすらできずにいた。生命力とともに、荒れ狂う炎も勢いを失いつつあった。
「ユーラの様子はどうです?」
 森の中に入り込み、周囲を警戒しながらシャイアはユーラを降ろす。三人はそっと、ユーラの顔を覗き込んだ。
 彼女の額に埋め込まれた赤い石が、ゆっくりと明滅していた。
「・・・・・・・・・・・」
 三人は、何も言えず、ただただユーラを見つめていた――――。

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