FC2カウンター なすかの世界 LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
LEVEL0  炎の守護顕獣-----守護の一族


     0-1 炎


「―――ラ!ユーラ!」
 遠くから自分を呼ぶ声に応え、意識を深淵から浮上させてユーラは目を覚ました。
「ユーラ!気がついた!?」
 心配そうに覗き込んでいるのは、彼女の従兄弟のナーヴァだ。
「‥‥ナーヴァ?‥‥あれ?わたし‥‥‥」
 消えかかる焚き火の側に倒れ込んでいる自分に気づき、ユーラは首をかしげた。何をしていたのか思い出せない。
「いったいどうしたのさ!何があったんだい!?」
 険しい顔をしたシャイアに問い詰められるが、ユーラは首をかしげるばかり。
「ええと‥‥確か‥‥薪を集めて、火をつけて‥‥それから‥‥」
 彼女は懸命に記憶をたどるが、それ以降のことは全く覚えていない。ぷっつりと途切れてしまっている。
「‥‥‥待ちくたびれて居眠りしてしまったとか?」
 柔らかくそう言ったのはベイルだった。口元は微かに苦く笑っている。
「‥‥‥そう‥‥なのかなぁ?」
 そう言われるとそんな気がしてくる。
「おいおい、しっかりしてくれよ、ユーラ」
 ナーヴァは半ば呆れ、半ばほっとして笑った。ベイルも今度ははっきりと苦笑している。だが、
「何言ってんだい!だったらこれは何だってのさ!」
 そう叫ぶと、シャイアはいきなりユーラの額にかかる髪を跳ね上げた。そして、その額を見たナーヴァとベイルの顔色が変わった。
「な、なんだそれ!?」
「これは‥‥!」
 ユーラの額を凝視したまま言葉を詰まらせた二人の様子を見て、ふと不安にかられたユーラは自分の額に手を伸ばした。
「え‥‥‥?」
 額に手を置いたまま、ユーラの動きが固まった。指先に、何か固い感触がある。しかも二つ並んで――――。
「いったい何があって、そんなもの額につけてんだい!」
 シャイアはユーラの肩を激しく揺さ振って問いつめる。
 シャイアが言う『そんなもの』とは、ユーラの額の真ん中に二つ並んでいる、大人の爪ほどの大きさの、紅い石のようなものだった。よくよく見ると、獣の目の形をしているように思える。
「ユーラ!」
「‥‥‥分からない」
 シャイアの激しさに、ユーラはようやくそれだけを言った。
 こんな石――のようなもの――は生まれたときからつい先刻まで無かった。
「分からないってどういうことだい!知らないうちにそんなものがついてしまったとでもいうのかい!」
「だって分からない!分からないんだものぉ!!」
「そんなはずないだろ!ユーラ、よく思い出してみろよ!」
 シャイアにナーヴァが加わり、ユーラを中心としていよいよ騒がしくなってきた。ここは森から少し離れた岩地。陽もそろそろ沈み始めており、岩陰や森の中に何が潜んでいるか分からない。ここで野宿しようというのに、あまり騒いで魔物を引き寄せるのはまずいのではないか。
 一人冷静なベイルは、ユーラから二人を引き離すと落ち着くようにと諭した。
「落ち着けだって?これが落ち着いてられるかい!」
「そうだよ!ベイル、澄ましてる場合じゃねぇぞ!」
「私はただ、場所をわきまえて欲しいといっているだけですよ」
「場所ぉ?!」
 そこで二人は我に返った。ベイルの言う通り、魔物や猛獣がうろつくこの辺りで騒ぐのは危険だ。
「解ってくれましたか?」
「ああ‥‥悪かったよ」
「ごめんな、ベイル」
 ベイルは二人ににっこり微笑むと、座り込んでいるユーラの前に膝を突き、静かに彼女の目を覗き込んだ。
「さて、ユーラ。君も落ち着いて、ゆっくりもう一度思い出してみなさい」
「ベイル‥‥」
 すがるような目をむけるユーラに、ベイルはその端正な顔に優しい笑みを浮かべてみせた。
「大丈夫、ゆっくり深呼吸して、まず私たちと別れたところから思い出していきましょう」
「‥‥‥うん」
 ユーラは言われるまま大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出し、そうして順に思い出してみた。
「まず‥‥薪になる枯れ枝を森の入り口付近で集めた」
「そうですか、言い付けどおり森には入らなかったんですね」
「うん‥‥‥。それから火打ち石で火を起こして‥‥」
「上手く起こせたようですね」
「え‥‥?だって‥‥‥それくらい出来ないと」
 ユーラは照れたような、それでいて苦い笑みを浮かべた。ベイルは絶えず優しく微笑んでいる。
「で?それからどうしたんだい?」
 今度は優しい調子でシャイアが尋ねる。
「うん‥とね‥‥、火が消えないように見てて‥‥‥」
 そこまでの情景を思い出した時、脳裏で炎が爆ぜた。そのとたん、ユーラはいい知れない恐怖に襲われた。
「い、いや!いやぁ!思い出したくない!いやぁ!!」
 ユーラの突然の取り乱しように、彼女を囲んでいた三人は驚き、慌てて取り押さえた。
「どうしたんですか?」
「いや!思い出したくない!怖い!」
「怖い?何が怖いんだい!?」
「いや!いやぁ!!」
 ユーラが頭を抱えてうずくまってしまったその時、消えかかっていた焚き火の炎が大きく燃え上がった。
「うわぁ!」
 その炎に背後から襲われたナーヴァが、地を転がって寸前でよけた。
「な、なんだい!?」
 シャイアはすばやく振り向き構えたが、炎は少しずつ小さくなっていき、ついには消えてしまった。その頃には、ユーラの様子も落ち着いていた。
 ベイルとシャイアは互いに顔を見合わせ、そして首を振った。これ以上追求するとユーラの心が壊れてしまうかもしれない。
「だからって、このままほっとくわけにはいかないだろ!?」
 従姉妹を心配してナーヴァが叫んだ。シャイアたちだって放っておく気は毛頭ない。
「とにかく、どこか‥‥‥大きな街に行って魔術院で調べてもらうしかないでしょう」
「ああ、そうだね。ここからだと・・・・西に三日も行けばあったはずだ」
「‥‥‥シャイア‥‥‥」
 ユーラはシャイアに不安そうな瞳を向ける。軽くため息を吐いたシャイアは、
「心配しなくてもいいさ。なんとかなるって」
 頼もしい笑みをユーラに贈った。

スポンサーサイト

Comment

管理人にのみ表示する


Track Back
TB*URL

Copyright © なすかの世界. all rights reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。