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虹を架ける者--------第23話


 本来一人用である野営テントの中に、大人が3人、子供が4人、車座になって座っており、彼らの中央には、輝きを無くした石が置かれている。
 7人は7様に、その石を見つめた。
「『虹の結晶』といったら、イリスに伝わるお伽話に出てくるやつかい?」
 しばしの沈黙を破ったのはシンディ。他国のお伽話を知っているとは―――、一応、一国の王女として、周辺諸国のことは学ばされているようだ。
「そうです、『虹の結晶』は、『虹の女神』というお伽話に出てきます」
 肯定したルーティは、一同を見渡した。
 イリス国の者であるアーリィとナムレスが知っているのは当然として、アイセント国の者であるシンディ、リューナ、デイザー国の者であるクレスとケンス、この四人の中に知らぬ者はいないようだった。
 それを確かめてなお、ルーティは目を閉じて、そのお伽話をごく簡単にまとめて話した。

===『虹の女神』===

 昔々、その国がイリスと呼ばれるずっと以前の話――――。
 自国の繁栄を願う、貧しい国の王子のもとに、虹色に輝く髪と瞳の女神が舞い降りた。
 王子と女神はともに愛し合い、国は、かつてない繁栄へと導かれた。
 その国がイリスと呼ばれるようになったある日、国中を混乱に陥れる瘴気がどこからともなく溢れ出した。
 女神は力の限りその瘴気を退けたが、力を使い果たし、愛する王子と子供たちを残して天へと還らねばならなくなった。
 還りゆく間際、女神は子供たちに石を授けた。悪しき気配から、国を守れるようにと――――。
 七色に輝くその石は、『虹の結晶』と呼ばれ、末永くイリスの国を守っているという――――。

 話し終えたルーティは目を開き、再び一同を見渡した。
「このお伽話は、単なる物語ではありません。我が国では、史実として伝わっております」
 ルーティはそこで静かに口を閉じ、他国の者であるシンディたち四人の反応を待った。真っ先に反応したのは、クレスとケンスの双子の少年たちだった。
「史実って・・・・・・ほんとにあったってこと!?」
「ほんとにほんとに女神が舞い降りたって事!?」
「「すっご~~~~~~い!!」」
 瞳を金剛石のように輝かせる二人の勢いに、思わず腰が引けるルーティ。
 興奮しまくる双子を手で制して静かにさせたシンディは、床に置かれた石を指差して言った。
「で、これがその女神から授かったモノだ・・・と?」
「はい、そうです」
 ルーティは、ひけていた腰を戻すと、こっくり頷いた。
 ルーティの言葉を受けて、シンディはさらに石を凝視する。
「そんな大層なモノには見えないね・・・・・・」
「隊長!」
 シンディが率直な感想を漏らした瞬間、リューナが小さく、だが鋭い非難の声を上げた。
 他所のお国の宝に向かって、何て事を言うのか!
「いや・・・だってさ、リューナ・・・・・・」
 非難を受けたシンディは、弱ったというように頬を掻いた。
「いいんですよ、『結晶』は今、力を失ってますから」
 シンディを庇うように、そっと補足するルーティ。
「失ってるって・・・・・・いつから?」
 本人に他意はまったくないのだが、無遠慮にもほどがある、とリューナはシンディの後頭部を叩きそうになり、すんでのところで思いとどまった。たとえそうは見えずとも、シンディは自国の『王女』であり、自身の『上司』なのだ。
 そんなリューナの様子を見て、沈んでいた心が少し軽くなったのか、ルーティはくすりと笑った。そして、再び真剣な面持ちになると、
「『結晶』の力が完全に失われたのは先ほど、魔女を退けた時です」
 そこでルーティはそっと『結晶』を撫でる。
「ですが、『結晶』の力が徐々に弱まっていることは、しばらく前から感じ取っていました」
 真実、永きに渡って『結晶』は『何か』からイリスの国を守っていた。それは、『結晶』と通じ、ともに守ってきた『巫女』の位に立つ者にはわかっている。
 お伽話や、先ほどの魔女の話から推察すると、『結晶』が退け続けたその『何か』とはおそらく――――、
「人心を惑わせ狂わせる、『瘴気』・・・・・・そしてそれは、あの魔女の仕業・・・」
 ルーティはぎゅっと唇を噛み締めた。


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