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虹を架ける者--------第11話

 昆虫の国、アイセントの北部中央は、岩山ばかりの不毛の荒野。そんな地でも、たくましく生き抜く小動物や小さな虫たちは、北西へとひた走る二頭の大蟷螂に蹴散らされまいと、岩陰に素早く避難した。
 巣穴の目前を、砂煙を上げて二頭の大蟷螂が駆け抜けていく。
 前を走る大蟷螂に騎乗してるのは二人、王立大鎌騎兵隊隊長のシンディと、お嬢様育ちを隠しきれない訳有りの旅人ルーティ。後ろの蟷螂に騎乗しているのは一人、王立大鎌騎兵隊隊員のリューナである。
「だいぶ走ってきたが、アジトらしいものは見当たらないな」
「もうそろそろ最北端のメガラロックに行き着きますよ」
 砂埃を浴びないよう、フードを目深に被り、布で口元を覆っているが、シンディとリューナは疾走を続けながら難なく会話を交わす。
 吹き過ぎる風が痛くて、目すら開けていられないルーティは、二人に続いて会話に加わろうと果敢に挑戦するが、なかなか上手くいかない。
「メ・・・ガラロッ・・・ク?」
 そう絞り出すのがやっとだった。
「巨大な一枚岩のことさ。頂上は目視では確認できないし、端から端まで数千kmもある、とてつもなく巨大な岩のことさ」
「そこが我が国の北端になります」
 アイセントの北と国境を接しているのは、砂漠の国デイザーだ。そのメガラロックから北へ行くと、徐々に砂漠が広がっているという。
「神々の寝台、とも言われててね・・・って、だいぶ前から見えてるだろ?」
 シンディは前方を指差すが、砂埃が痛くてずっと目をつむっていたルーティには見えていない。なんとか目を開けて見てみようとするも、びしびしと風や砂が顔にぶち当たっている状況では、ほんの少しも開けていられない。
 そうするうちに、騎乗していた大蟷螂がふいに停止した。
「ほら、麓に着いた」
 停止したことで風と砂の負荷が和らぎ、ルーティはようやく目を開けることができた。そうして前を向いた彼女の口が、知らず知らず大きく開かれていった。
「す・・・・・・すごい・・・」
 眼前には、継ぎ目の一切ない岩が、上にも左にも右にも続いていた。まったく端が見えない――――それほどの巨大な一枚岩だった。
「さて・・・どうしたもんかね。メガラロックを迂回して、さらに北西へ向かうべきかな?」
 シンディとリューナが目指していたのは、盗賊団「封龍」のアジト。昨日捕らえた下っ端の自供により、マンセンから北西へ走ってきたわけだが、それらしい建造物は見られなかった。
「許可なく国境を越えるのはまずいですよ」
 さらに北西へ――――ということは、北の隣国デイザーに入るということ。正式な軍に所属している者が許可なく踏み入ることは、領域侵犯とみなされ、両国の戦争に発展しかねない。
「む~・・・・・・見落としてはいない・・・よな?」
「隊長じゃあるまいし・・・・・・見落しはあり得ません」
 澄ました顔で、聞き捨てならないことを言ったリューナに、シンディが詰め寄ろうとした時、大蟷螂に腰掛けたままだったルーティが、半ば落ちるように降り立った。
 そして、前方を見据えたまま、ゆっくりとした足取りでメガラロックに近寄る。
「なにか・・・・・・あります・・・隠されています」
「え?隠されてるって・・・?」
 ルーティの突然の言動に、シンディとリューナは眉根を寄せる。
「幻術・・・・・・幻で、実際にあるものをないように見せる・・・そんな術があります」
 ルーティはそっと、前方に手をかざした。すると、そこに不可視の壁でもあるかのような手ごたえがあった。
「幻術・・・ですか・・・・・・我が国はそういった類の術には精通してませんからね」
 本当にそんなものがあるのかさえ、二人にはわからない。正直、ルーティの言っていることも、半信半疑――――いや、七割ほど疑わしい。
「私が破ってみます」
 そう言い放つなり、ルーティは纏っていた外套を脱ぎ捨て、懐に隠れていたキャッパーを肩に乗せ、手を組み、祈りの姿勢をとった。
 なにやら重厚な雰囲気を漂わせ始めた少女に、大人の女性二人はかける言葉を失い、ただ静かに見守った。そして――――、
「解!」
 小さいが、はっきりとした声がしたかと思えば、何かが割れて四散したような音が聞こえた。すると、閉められていたカーテンが開くように、今まで見えなかった建造物が徐々に姿を現していった。
 そうしてとうとう、三人の眼前には、岩肌を掘って作られた小さな城が出現していた。

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