FC2カウンター なすかの世界 虹を架ける者--------第10話
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虹を架ける者--------第10話

 アイセント王国の街マンセンの北西に広がるは、岩山ばかりの不毛の荒野。
 街道から外れていることもあり、旅人の姿は見受けられない――はずであったが、太陽がちょうど中天に差し掛かろうというこの時、マントを目深にかぶってひたすら北西を目指してゆく、人の姿がひとつあった。
 風の音ばかりで、生き物の鳴き声すら聞こえてこない。そんな寂しい道行でも、その旅人――――ルーティの足は躊躇なく進んでいく。
「ふぅ・・・・・・ひどく埃っぽいわね」
 風に舞い上げられた砂が、容赦なくルーティに降りかかる。
「あぁ、ダメよ、キャッパー。出てきちゃダメ」
 はだけないように、マントの合わせ部分をきつく握り締めてる彼女の胸元で、もぞもぞと何かが動く気配があった。
 マントからちらりと顔を覗かせたのは、色あせた茶色の毛並みの小さな猿。
「ゥキャッ!」
 風が強く、とても目を開けていられないと悟った小猿は、さっとルーティの懐に潜っていった。
「わかっているわ、お腹がすいたのでしょう?もうずいぶん歩いたものね」
 宿の主人に、簡単なお弁当を作ってもらっているが、この状況では落ち着いて食事をすることなどできない。包みを開けたが最後、せっかくのお弁当が砂だらけになってしまう。
「どこか、風を避けられる場所があればいいのだけど・・・・・・」
 ルーティはぐるりとあたりを見回したが、風は岩山の隙間を縫うように吹いている。洞でもあればいいのだが――――具合のいい場所を探しながら先へ進もうとしたその時、彼女の耳は、風以外の音を拾った。
 ドドド、と、何やら大きな物の足音のように聞こえる。それが、背後から迫ってきているようだ。
 猛獣でもいるのかと、ぎょっとして振り向いたルーティが見たものは、馬ほどの大きさもある二頭――2匹?――の蟷螂が、ものすごい勢いで駆けてくる姿だった。
「ひっ!」
 あまりにも驚きすぎて、引きつった声しか出ないルーティの目の前で、二頭の大蟷螂は鎌を振り上げ、急停止した。
 斬られる!そう思って目をつむり、身を硬くしていると、大蟷螂の上から聞き覚えのある声が降ってきた。
「あれ?昨日のお嬢ちゃんじゃないか?」
 おそるおそる顔を上げてみると、昨日、賊から救ってくれた恩人である、王立大鎌騎兵隊隊長のシンディであった。
 もう一頭の大鎌きりに騎乗しているのは、同隊員のリューナだ。
「あ、はい・・・・・・ルーティです」
 顔見知りの突然の登場に唖然としつつも、身の危険はないとほっとするルーティ。
「こんなところでなにやってんだい?もう一人のお嬢ちゃんは?」
 シンディは大蟷螂から降りながら、率直に聞いてくる。
「え・・・えぇと・・・・・・アーリィとは今、別行動で・・・・・・」
 ルーティがしどろもどろに答えると、シンディは眉間に皺を寄せて睨みつけてきた。
「女の子の二人旅でも危険だって言ったのに・・・一人で行動とはどういう了見だい!?」
 上から見下ろすように詰め寄られ、身を縮めるルーティ。
「あの・・・その・・・・・・」
 返答に困っていると、リューナから助け舟が出された。
「隊長・・・そんな怖い顔では恐ろしくて何も言えなくなりますよ」
 その一言に、ムッとするシンディ。しかしもっともなので、ひとつ咳払いをし、表情を作り直してもう一度聞きなおす。
「昨日、街で護衛を雇うように言っただろう?」
 これに対するルーティの応答は、
「あ・・・・・・忘れてました」
 これにはシンディだけではなく、リューナまでも肩をがっくりと落とした。
「す、すみません!」
 確かに護衛を雇うと約束していたのに、魔女の一件ですっかりと忘れてしまっていた。生真面目なルーティは、恥じ入ってますます小さくなる。
「あぁ・・・まぁ・・・いいけどさ・・・。で?何だってこんなところにいるんだい?」
 こめかみに指を当てながら、シンディがさらに質問を重ねる。
「えぇ・・・その・・・あちらの方に用がありまして・・・・・・」
 そう言ってルーティは、北西を指差す。
「へぇ・・・奇遇だね。あたしたちもあっちの方に行くんだよ」
 シンディも、北西の方角を見ながらそう言った。
「ほら、昨日あんたたちを襲った賊ども。あれから砦で取調べをしてたんだけど、マイセンの北西の方から来たって吐いたんでね。アジトがあるんじゃないかと思うんだ」
「吐いた・・・?怪我の具合、そんなにひどいのですか?
「は?」
 ルーティの頓珍漢な問いに、シンディは素っ頓狂な声を上げた。そこにリューナが隊長の脇を突付き、
「自供した、と言い直した方がいいですよ」
 と忠告した。
「そうか・・・・・・令嬢には乱暴な言葉だったか」
 苦笑いするシンディ。
「まぁ、あんたの用事が何かは知らないけど、方角が同じなら一緒に乗っていきな」
 と、昨日と同じく大蟷螂を指差す。ルーティの反応も、やはり昨日と同じで、口元が引きつっていた。
 だが、約束を違えた後ろめたさもあり、断ることもできず、結局同乗していく事になった。
 旅の道連れができ、ルーティはさらに北西を目指す。

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ふむふむ・・・続きが気になるではないか!3ヶ月に一度の更新は長すぎるよ~;;w
かっぱ | URL | 2007/07/13/Fri 21:08 [EDIT]
「続きが気になる」
そのせりふ、そっくりそのまま返してあげよう^-^
なすか | URL | 2007/07/14/Sat 12:48 [EDIT]
Σ('◇'*)エェッ!?ほぼ毎日の更新でもだめなの?;;w
かっぱ | URL | 2007/07/15/Sun 01:59 [EDIT]
(*´ー`) フッ
全話、毎日更新してるわけじゃないじゃーん(*´ー`)

なすか | URL | 2007/07/16/Mon 16:54 [EDIT]

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