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虹を架ける者--------第9話


「さて・・・・・・困ったわ」
 昆虫王国アイセントの東域最大の街マンセンにある、中級の宿の一室で、一人の少女がため息をついた。
 窓から差し込む陽光を受けて、微かな輝きを放つ茶色い髪を弄びながら、少女はもうひとつため息を吐く。
 彼女――――ルーティが何を思い悩んでいるのか、それは――――、
「これからどこへ向かえばいいのかしら・・・・・・?」
 国を出る際も、この街に辿り着くまでの過程も、すべてお供のアーリィに頼りきっていたことを、今更ながらに痛感するルーティ。
 先刻、魔女を追うといって別れたアーリィのことは、実を言えばとても心配だった。何と言われようと、一緒に行けば良かったと、後悔の念は押し寄せてくる。
 しかしその度に、自らの使命を思い出し、後を追って駆け出そうとする足をとどめていた。
 最も信頼の置ける、友人と言ってもはばからない少女を追いたい気持ちと、使命を果たさなければならないという使命感とに板挟まれ、身動きが取れない。
 はっきりとした目的地があるならば、もしかしたら動き出せたかもしれないが、彼女の負う使命の行き先にはまったく当てがない。
「本当に・・・・・・困ったわ」
 何度目になるであろう、深い深いため息に、反応する者があった。
「ゥキャ?」
 主人が戻ってきても、寝台の上で安らかに眠り続けていた小猿のキャッパーである。
「あら、キャッパー、おはよう」
 ルーティが優しく手を差し伸べると、小猿は素早い動きでその手に飛び乗り、腕を伝って肩まで上り詰める。そして、ルーティの頬に嬉しそうにほうずりをする。
 そんな小猿の首辺りをそっとくすぐりながら、ルーティは独り言のように呟く。
「ねぇキャッパー・・・・・・私はどこへ向かえばいいと思う?」
 尋ねられた小猿は、小首をかしげる。
「ウーッキャウキャキャ」
「え?行きたいと思う方へ行けばいいって?」
 なんと、ルーティには小猿の言っていることがわかるらしい。
「ァキャキャキャゥキャ」
「そこに解決の糸口があるはずだって?ほんとに?」
「ゥーッキャ!」
 小猿は自信満々に頷いた。
 周囲に誰かいれば、この異様な光景に眉をひそめたであろう。しかし幸い、ここは彼女が泊まっている宿の部屋、他に人はいなかった。
 しばらく考え込むルーティ。そこへ小猿がもう一言、何かを言った。
「アキャゥキャ」
「意識を研ぎ澄ませるのね?神殿でやっていたように・・・・・・」
 それは、国を出る以前、彼女が日課としていたことだった。
「わかったわ」
 ルーティはそう言うと、小猿を寝台に下ろし、自らは床に正座して目を閉じた。
 静かな時が流れる――――。
 どのくらいそうしていただろうか――――やがてルーティはゆっくりと目をあけた。
「・・・・・・確信はないけれど・・・・・・」
 そうして彼女はある方向を指差した。
「あちらの方向へ進めばいい気がするわ」
 それは北西の方角だった。地図によれば、岩山ばかりの不毛の地である。
「アキャッ!」
「そうね、まだ陽は高いし、荷物をまとめて行ってみましょう」
 そう言ってルーティは元気よく立ち上がる。

 一方、アーリィは――――。
「やっぱり・・・・・・こっちへ向かうと苦痛が和らぐ・・・・・・」
 魔女から受けた傷をそっと触る。そこから全身へと巡った毒が、今もアーリィを苦しめていた。精神を、暗い方へ、暗い方へと引きずり込もうとする、厄介な毒である。
 その毒からくる心の痛みが、ある方向へ向かうと和らぐのだ。
「私なら場所が解ると言ったのは・・・・・・こういう訳ね」
 館へ赴けば、解毒すると公言した魔女――――。館に近づくことで、毒の効果が弱まるようだった。
「毒を解いて・・・・・・必ず戻ります」
 脳裏に唯一絶対の主人たるルーティを思い浮かべ、アーリィは歩み始めた。その方角は北西――――。


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2ヵ月後との更新・・・続きは6月?w
もう少しペースを上げてくれ~w気になるじゃまいかw
かっぱ | URL | 2007/04/23/Mon 23:41 [EDIT]
>かっぱさん
ふむ・・・・・・・ではこうしましょう!
かぱさんが毎日更新すれば、1ヶ月に1回のペースに!b
フフフフw
なすか | URL | 2007/04/24/Tue 21:42 [EDIT]

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