FC2カウンター なすかの世界 2008年10月
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虹を架ける者--------第17話

 魔女の館の大広間に突然現れた七色の光は、二人の少女を魔女から庇うように空中で静止した。
「な・・・なに!?」
 それに驚いた魔女が手を止めた瞬間、光は輝きを増して室内を満たし、さらには廊下を伝って城中の隅々までをも、その光で照らし出した。
「ぅ・・・あ・・・あぁぁぁぁああ!!!」
 苦痛に満ちた、甲高い悲鳴が広間を響かせた。それを発しているのは、魔女だ――――。
 光がその勢いを徐々に弱めていくと、ルーティはその光の中に、小さな猿のようなシルエットを見出した。
「・・・キャッパー!?」
 しかしそのシルエットは、だんだん崩れていき、城中を満たしていた光が完全に消えた時には、誰かがこぼした涙のような形をした、拳大の石に変わり果てていた。
「あぁ・・・そんな・・・キャッパー」
 光を失い、床に落ちたその石を拾い上げたルーティは、そっと抱き寄せた。その時、とても聞き取りにくい、しわがれた声がした。
「それは・・・その石はぁぁぁ・・・」
 見上げたルーティの瞳に映ったのは、白髪で皺くちゃな姿をした、小さな老婆だった。それは、マンセンの街で出会った時の、占い師姿の魔女だった。
「まさかそれはぁ・・・虹の結晶ぉぅ・・・・・・」
 床に這いつくばった魔女は、苦しげな声を紡ぎだす。
「あれほどぉ・・・国を荒らしてぇ・・・探したというに・・・・・・見つからなかったのはぁ・・・お前が持っていたからかぁぁ・・・」
 石に向けて伸ばされた、魔女の骨ばった手を見つめていたルーティは、聞き捨てならないことを耳にし、柳眉を逆立てた。
「国を荒らした・・・・・・?」
 主人のその言葉に、アーリィもはっとする。
「まさか!我が国を瘴気で脅かしているのは、お前か!」
 アーリィはそう言い放つと、すっくと立ち上がり、今にも抜き放つ勢いで、短剣の柄を握り締めた。
「この石は、我が国を古の時から守護してくれた宝玉・・・・・・」
 ゆっくりと立ち上がったルーティはそっと瞳を閉じる。
「それが・・・ある日から国中に瘴気が溢れ、その気に毒された民たちは荒れに荒れ・・・ついには国王と王妃は弑逆され・・・・・・」
 言葉を一度切ったルーティは、閉じていた瞳をかっと開き、
「それはすべて、あなたの思惑ですか!!」
 毅然と立つルーティの瞳は爛々と燃え盛り、青い炎のようだった。
「き・・・ひ・・・ひひひひひひ」
 奇妙な笑い声を立てた魔女は、最後の力を振り絞るように立ち上がり、
「虹の結晶・・・・・・それは必ずこのあたしがいただく・・・」
 そうして、ずりずりと後退ったかと思うと、
「再び・・・力を取り戻すまで・・・お前に預けておいてやろうぞ!」
 さっとマントを翻した魔女は、一瞬のうちに姿を消してしまっていた。
「待て!」
 アーリィは、今しがたまで魔女が立っていた場所に駆け寄るが、もう姿はない。
「なんてこと・・・・・・」
 がっくりと床にくず折れたルーティは、手の中の結晶を見つめる。
「弱くなった結晶の力を蘇らせるために、七色の泉を探していたというのに・・・・・・」
 瞳を閉じ、結晶を額に当てて、
「残っていた力を、使い果たさせてしまった・・・・・・」
 そうして、ルーティの瞳からいくつもの雫が流れだした。
「キャッパー・・・・・・もう、あなたに会えない・・・」
 小猿のキャッパーは、虹の結晶の精ともいえる、結晶が作り出した聖獣だった。結晶に宿っていた力を使い果たした今、もはや小猿の姿をとることは出来ない。
「ルーティさま・・・・・・」
 嘆き哀しむ主人に、かける言葉が見つからず、アーリィはただただ見守った――――。

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虹を架ける者--------第16話


 見つめていると吸い込まれるような感覚に捉われる、そんな黒大理石が敷き詰められた多少カーブしている廊下を、ルーティはひた走った。
 それを追うのは、楽しげな笑みを浮かべ、軽やかな足取りで歩いている魔女、ナスティカ。
 二人の距離は、縮まることはなかったが、広がることもなかった。
(なんとか・・・なんとかしなければ・・・・・・)
 ルーティは懸命に足を動かしながら、思考もめまぐるしく回転させていた。
 こんなところで死ぬわけにはいかない――――その思いのみが、少女を突き動かす。
「どこまで行く気だぁい?」
 到底逃げられやしないと、ほくそ笑む魔女。その様子を見ているものがもしいたならば、美しい――――と素直に感嘆したことだろう。もっとも、可愛らしい少女を笑いながら追いかけているという、異様な状況でさえなければ――――。
 永遠に続くかと思われた長い廊下も、いよいよ終わりが見えてきた。
 廊下と部屋の仕切りとして、黒石でできたアーチ状の石組みがある。その向こう側に見えているのは、黒絹のカーテンで飾られた、同じ黒石でできた壁――――。
(行き止まり!?)
 ぎょっとしたルーティだが、背後から魔女が迫り来る。止まる訳にも行かず、その部屋に飛び込んだ。
 途端、視界に飛び込んできたのは右前方、部屋の中央に位置する豪奢な造りの玉座。天井には煌くシャンデリア。床の深紅の絨毯は、ルーティの踝までもすっぽりと覆い隠すほど深い。
 入ってきたのと同じ壁には、他にも二つ、どこかへと繋がる空洞とアーチ状の石組みが見えた。
 そして、その手前のアーチの前に佇んでいたのは――――。
「ア・・・・・・アーリィ!?」
「・・・・・・ルーティさま・・・」
 二人の少女が、お互いに驚愕の瞳で見詰め合う。そこへ、冷や水を浴びせるかのように魔女が言葉を紡ぐ。
「ここがお前の終着地かい?」
 はっと振り返ったルーティの目前に、魔女は艶然と立ちはだかっていた。
 カタカタと音がする――――。その音の発生源を辿ってみると、自身の口元に行き着いたルーティは、震えて音を立てる歯をぐっと噛み締めた。そして――――、
「私は・・・私は死ねない・・・!泉を見つけて戻るのを皆が待ってるから!!」
 そう言い放つと、魔女に向けて短剣を構えた。それを見て、魔女は高らかに笑った。
「ほーほほほほほほほ!」
 愉快なジョークを聞いたとばかりに、魔女はしばらく笑い続けた。そして、ようやく発作のような笑いをおさめると、目に溜まった涙を左手の親指で拭い取る。
「ぁ~可笑しい・・・」
「何が可笑しいのです!?」
 かっとなって叫ぶルーティ。そのルーティを目を細めて見つめながら、魔女はゆっくりと右腕を上げていった。
「可笑しいじゃないか・・・そんな玩具のような剣で、このあたしに刃向かおうなんて!!」
 ぶん!と唸る様な音を立てながら、鉤爪の生えた魔女の右腕が、ルーティめがけて振り下ろされる!
 ガキーン!!
 鈍い金属音とともに、ルーティの持っていた短剣が宙を飛んだ!
 剣を弾き飛ばされた勢いで、少女は柔らかい床に倒れ込んだ!
「次で終わりだよ・・・」
 ことさら優しい声音で告げる魔女。そうして再び右腕が頭上に上がった時、二人の間に割って入る者がいた!
「させない!」
 ルーティさまは殺させない!口より雄弁に語る瞳で、魔女を睨みつける赤毛の少女。
「アーリィ!?」
 またしても邪魔者が現れたことで、魔女は機嫌を最高に損ねた。
「だったら二人仲良く死にな!!」
 湾曲していた鉤爪が剣のように真っ直ぐになり、ルーティとアーリィ、二人の少女を刺し貫くべく迫りくる、その一瞬――――
(また・・・また私のせいでアーリィが傷つく・・・!)
「そんなのは・・・・・・だめぇぇぇぇええ!!」
 ルーティの絶叫が響き渡ったその時、彼女の胸元から七色に光る物体が飛び出した!


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