FC2カウンター なすかの世界 2008年09月
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虹を架ける者--------第15話


 そのものの姿をそっくり映すほどに磨き込まれた大理石のロビー。その上で、複数の剣戟の音が賑やかに踊っている。
 レイピアを巧みに操って、四人の男を相手取っているのは、アイセント王国大鎌騎兵隊員のリューナ。
 長剣を構え、まだ若い二刀流の男と対峙しているのは、同じく大鎌騎兵隊隊長のシンディ。
 この二組の闘いを遠巻きにして、ルーティはおろおろとしていた。彼女には戦闘能力がなく、激しく動き回るシンディたちについていけず、ただ見ていることしか出来ない。
「どうしよう・・・どうしたら・・・・・・」
 自分が出来ることは何かないか、懸命に思案する彼女の背後から、楽しげな、それでいて冷たい声がかけられた。
「お困りのようだね、お嬢ちゃん」
 ハッと振り返ったルーティの目の前で、魔女は真っ赤な舌で自身の鉤爪を舐め取った。
「さて・・・覚悟はいいかい?」
 にやりと頬を緩める魔女の顔を見つめながら、ルーティは今、自分に出来ることを必死に考え、そして実行した。
 少女は踵を返すと、脱兎のように駆け出した。
 逃げること――――。
 ルーティに出来ることは、それしかなかった。彼女には、死ぬわけにはいかない訳がある!
「おやおや」
 魔女は微笑み、少女を見送った。狩りと洒落込むのもおつなもの――――。そんな余裕が見て取れる。
「さぁて・・・どこまで逃げれるかねぇ」
 そう言うと魔女は、大理石のロビーを滑るように歩き、ルーティの後をゆっくりと追っていった。
 少女と魔女の姿がロビーから消えた後も、シンディたちの剣戟の音はしばらく続く。

 ――――おかしい。
 リューナは気付いた。
 夜盗集団『封龍』の下っ端であろう四人の男を、殺さず生け捕るために手加減しつつ、戦闘力を奪う程度には斬りつけている。
 しかし、男たちはいくら斬りつけようとも倒れない。それどころか、息も乱さず次から次へと襲ってくるのだ。
 リューナが斬りつけた箇所から血を滴らせながら、それでも痛みすら感じていないかのように闘い続ける男たち。
 これはいくらなんでも、おかしい――――。
「隊長!この者達は普通ではありません!」
 男たちの攻撃をかわしながら、リューナはシンディに忠告する。
「あぁ・・・・・・おかしいね」
 二刀流の男――――キルーと呼ばれた若者と切り結びながら、シンディも頷く。
 確かにおかしかった。
 シンディが何を言っても、キルーの表情は動かない。シンディを見ているのに、その瞳には何も映してはいなかった。
「あの魔女とやら・・・・・・」
 キルーの右の剣を、左の篭手で受け止め、彼の左の剣を己の剣で止めたシンディは、少々乱暴ながら、キルーの胸を蹴り飛ばした。
「こいつらに何かしやがったね・・・!」
 シンディは魔女がルーティを追って消えた通路を睨み付けた。すぐにでも追っていきたいところだが――――。
「そういうわけにもいかないようだね・・・・・・」
 緩慢な動きで立ち上がった、無表情なキルーを見据えながら、シンディは歯噛みした。 そうして、再びロビーは剣戟の響きで満たされた――――。

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