FC2カウンター なすかの世界 2006年05月
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▼LEVEL0---魔導師の塔を攻略せよ!
☆ 求む!仲間!

 『共に冒険してくれる仲間を募集中!こちら、魔術士の二人組み。性別は♀。中央通り沿いの夕月亭にて待つ!』
 大陸屈指の大帝国の片隅にある街の、行商人や冒険者などの旅人からこの町の人々までが利用する大衆食堂に、こんな張り紙があった。
 大衆食堂には様々な人間が集まるため、こういった宣伝用の張り紙が、出入り口の壁に所狭しと張られている。そんな中で、冒険者が仲間を募集するための張り紙は決して珍しいものでもないというのに、この張り紙はかなり目立っていた。
 何というか、その文字が一種独特なのだ。どう独特かというと、子供の絵がでたらめなようでいてどこか法則に従っているような、そんな感じのする文字なのだ。
 そのおかげと言おうか、大衆食堂に訪れた冒険者の目に必ずといって留まっていた。

☆ ダーラスの場合

 見るからに傭兵という男が大衆食堂に入ってきた。
 適当に空いている席につくと、彼は安価でありながらボリュームたっぷりの定食を頼む。そして、食事が届くまでの間、何とはなしに食堂内を見渡した。
 比較的出入り口に近いところに座っていた彼の目に、『仲間募集中』の張り紙が目に入った。
「仲間‥‥か。たまには冒険者に雇われてみるのもいいか‥‥‥」
 彼の名はダーラス。見た目通りの傭兵である。この街の領主に半年間契約で雇われていたのだが、この日、その契約期間が終了し、またどこかの街に流れていくつもりでいたのだ。
「傭兵生活も飽きたしなぁ‥‥‥」
 ダーラスは決めた。食事を終えた後、さっそく指定の『夕月亭』に行ってみようと―――。

☆ エリウスの場合

「仲間募集?魔術士二人‥‥‥」
 冒険者風の男性が、大衆食堂に入るなり、食事をすることもなく張り紙を見つめている。ここでは、働き口の紹介もしているので、こういった客は珍しくない。
 彼は、街の人たちの『従業員募集』の張り紙は一切無視し、冒険者関係のものばかり見ている。そこで目に留まったのが例の張り紙だった。
「魔術士二人じゃ、俺のような剣士は必要だろうな」
 彼の名はエリウス。先月まで他の仲間たちと冒険をしていた、ベテラン冒険者だ。彼の仲間たちは皆、結婚や家督を継いだりして冒険者を辞めてしまったのだ。
「新しい仲間を探していたところだし、ちょうどいいな」
 そう言ってエリウスは食堂を出ていった。

☆ ナースィの場合

 大衆食堂に、また一人入ってきた。なかなか豊かな胸元には、この大陸ではあまり見られない神のシンボルがぶら下がっている。
 彼女は適当に席につき、適当に注文し、適当に食べるとさっさと席を立った。そして、食堂を出て行く時に、一つの張り紙に目が留まる。
「仲間募集‥‥‥。女が二人?」
 彼女は、その張り紙がもっと良く見えるように、それが張ってある壁の前に立った。
「女二人だなんて‥‥‥。きっとこれ見て集まるのは野郎ばかりなんだろうな」
 彼女の名はナースィ。それなりの神殿で修行を積み、ちゃんと神官の位を得たものの、決まった神殿で奉仕せずに各地を渡り歩いている不良神官である。
「野郎に良いようにされないよう、あたしが護ってやるか」
 そうして彼女は意気揚々と食堂を出て行くのだった。

☆ 夕月亭

「はぁい!お一人ずつ名前と士名をお願いしまぁす!」
 夕月亭の部屋の一つから、少女と思しき元気な声が聞こえてくる。その少女の台詞の後には、男性の声が続いた。
「ねぇねぇミュウ、5人も来たわよ。しかもみんな戦士!」
 年の頃16歳の少女が、張り紙を見て応募に来た戦士たちを指しながら、背後の連れに声をかけた。
「あむあむ、むぐむぐ、ごっくん!‥‥ホントだねぇ!」
 声をかけられた十歳くらいの少女が、口一杯に頬張っていた果物を飲み、にこにこ顔で応えた。
「五人とも仲間にすると全部で七人になるのね。多いかなぁ?」
「むぐむぐ、むしゃむしゃ、ごっくん!‥‥あのね、アイリィに任せる」
「うーん、そうなの?どうしようかなぁ‥‥‥」
 年長の少女、アイリィが首をひねって思案していると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「はぁ~い!だぁれ?」
 アイリィが応えたのを聞いた訪問者は、遠慮なく扉を開けて入ってきた。それはかなり背の高い男性だった。
「あ、もしかしてあなたも応募者?」
 如何にも旅慣れた風体――しかも剣を帯びている――の男を見て、アイリィはそう問い掛けた。
「ああ、そうだ」
「それじゃあ、お名前と士名を教えて」
 さっとメモを取り出すアイリィ。
「俺の名はダーラス。冒険者ではなく、傭兵だ」
「‥‥傭兵?それってお金をもらう代わりに戦争する人?」
「ああ、まあな。傭兵がやるのは戦争だけじゃなく、要人の護衛をすることもある。冒険者との違いはたいしてない」
 アイリィはそこで瞬きしながら考え込んだ。傭兵は金次第で動くというのは一般常識だ。この男を仲間にするには金が必要になる。だが、余分な金は一切ない。しかし、なんといってもダーラスは好みの男性―――。
 そんな風にアイリィが悩んでいる様子を見て、ダーラスは何を考えているのか一部察した。
「金なら必要ない。たまには冒険者の真似事もいいだろう」
「ホント?良かったぁ!それじゃあね‥‥‥」
 その時、また扉をノックする音が聞こえてきた。アイリィがそれに応えると、訪問者はすぐに入ってきた。
「お?なんだ、いっぱい来てやがるな」
「あなたも応募者ね。それじゃ、お名前と士名を教えて」
 またまたナイスなルックスの男性の登場で、アイリィは嬉しそうにメモを取り出す。
「エリウスだ。冒険暦10年の剣士だ」
「10年!わあ、ベテランさんねぇ!」
「ふ、まぁな」
 キザったらしく髪を掻きあげるエリウス。
「エリウスね。それと剣士、と‥‥剣士?戦士とは違うの?」
 メモに書き記す手を止めて、アイリィはエリウスにそんな疑問をなげた。
「本来、戦士っていうのは闘う者という意味だ。極端な話、あんたのような魔術士も戦士と呼べないこともない。あえて剣士との違いをあげるなら、戦士は状況に応じてどんな武器ででも闘う。それに対して剣士は剣一本のみ、てところだな」
「へぇ、そうなんだぁ。なんだか信念があってかっこいい!」
「ふ、まぁな」
 またまたキザったらしく髪を掻きあげるエリウス。
「これで全部で九人かぁ。やっぱり多いよねぇ、ミュウ」
 メモを片手に振り返ったアイリィに、いつまでも果物を頬張っているミュウはにこやかに応えた。
「ミュウ、わかんない!」
「‥‥‥」
 しばし沈黙のアイリィ。そこへ、
「はぁい!集まってる?」
 ノックする事もなくいきなり扉を開けて入ってきたのは、胸元に聖印をぶら下げている女性だった。
「あらまぁ、思った通り野郎ばかりねぇ!」
 女性は呆然としているアイリィにずかずかと近寄り、
「あたし、ナースィ。一応、神官位持ってるから何かとお得よ」
 ”あたしを選びなさい!”と、きつい眼差しで告げるナースィに、半瞬呑まれかかったアイリィは、神官と聞いて目を輝かす。
「神官って、神官って怪我を治したりできるんだよね!」
「そうよ」
「わあぁ!それは本当にお買い得だわ!」
 アイリィは嬉々としてメモ帳に彼女の名を記す。それから改めて集まった面々を見渡し、いよいよ困った顔になる。
「いくらなんでも十人は多いよねぇ。どうしよう‥‥‥」
 そこでふと、アイリィとエリウスの視線がぶつかった。確かエリウスは冒険暦十年のベテラン。きっと良い知恵を授けてくれるだろう。そんな期待を込めた瞳で真っ直ぐ彼を見つめたアイリィは、
「普通、何人くらいで冒険すれば良いのか教えて?」
「ん?そうだなぁ‥‥‥。まぁ、五・六人ってとこじゃないか」
 深く考えもせず、エリウスはアイリィに応えた。
「五・六人‥‥‥。それじゃあ半分くらい削らないといけないのね」
 アイリィはメモと募集人員を見比べながらしばし悩んだ。その間一度もミュウにどうするか聞かなかったのは、やはり答えが予想できたからだろう。
「ミュウ、わかんない」
 そう応えるに違いない。
 さて、しばらく悩んだアイリィはふいにメモから顔を上げると、一同を見渡し、発表すると告げた。
「えー、長らくお待たせいたしました。栄えある、我らが仲間に選ばれましたのは‥‥‥」
 アイリィが妙な調子で決定を告げ出したせいか、こころなし、室内が薄暗くなり、スポットライトが自分たちの頭上を行ったりきたりしているような気がする彼らであった。
「まずお一人目、エントリーナンバー6!」
 そんなものがあったのだろうか?おそらく、アイリィの頭の中にだけあったのだろう。
「そんなもったいぶった言い回し、あたし嫌いなんだよ」
 と、ここで姐御の一言が入った事により、あとは普通に名を告げられた。
 結果、
「ダーラス、エリウス、ナースィ、よろしくね。後の人はごめんなさい」
 こうして、ここに一つのパーティが誕生した。
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